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腎臓貧血


貧血といえば、「鉄分の摂取不足」ではないでしょうか。 それだけでなく貧血には「赤血球の減少」が原因となっているケースがあります。 そこには、腎臓の働きが大きく関係しています。

●腎臓の機能低下で貧血になる理由

  腎臓の代表的な働きには、血液中の老廃物や増えすぎた塩分を濾 過して、尿にすることがあげられます。 ただ、腎臓の働きはそれだけではありません。 腎臓には、身体に必要なホルモンを分泌する役割があります。 そのなかに、骨髄を刺激して赤血球をつくるための「エリスロポエチン」というホルモンがあります。 赤血球は臓器を含め、身体の隅々に酸素を届ける役割をしてい ます。 慢性腎臓病(CKD)をはじめ、 腎臓がなんらかの原因で機能低下を起こすと、このホルモンの分泌が減り、血液中の赤血球が減少す ると身体は貧血状態になり、さまざまなトラブルが生じます。 腎臓の機能低下によって起こる貧血は、「腎臓貧血」と呼ばれています。

腎臓貧血 イラスト
●放置すると重大な結果に

 腎臓貧血の症状は、一般的な貧血と似ています。脳に送られる酸素が不足することで起こる、めまいや立ちくらみ、 頭痛、酸素をより取り込もうと心臓に負担がかかることで生じる、動悸や息切れ、胸の痛み、身体の 酸素不足による、厳しい倦怠感といったことがよく見られます。腎臓貧血は、慢性腎臓病が進行して悪くなると発症します。また、慢性腎臓病は悪化すると腎不全に至ります。また、腎臓貧血によって心臓への負担が増えることで、狭心症や心筋梗塞といった重篤な病気の発症リスクにもなっています。

●鉄分・ミネラルの補充だけでは解決しない

 腎臓貧血は、赤血球が減少することに問題があります。このため、不足しがちな鉄分やミネラルを、食事やサプリメントで補充するといった対策だけでは効果が期待できません。貧血対策で食生活の改善を行なうているが効果がないと感じる方は、腎臓貧血を含め、なんらかの病気が貧血の原因ではないか疑ってみることが必要です。

●薬物療法によってホルモンの産生を促す

  腎臓貧血の診断は、血液検査によってエリスロポエチンの産生か十分がどうかを調べます。治療法としては、エリスロポエチンの分泌不足を補う注射薬(ESA)や、エリスロポエチンの産生を促す内服薬による治療を中心に行なわれます。 赤血球は不足だけでなく、過剰になっても病気のリスクになります。赤血球が過不足ない状態を維持するように、治療は定期的に行なわれます

●身近な病気のひとつ

   腎臓貧血を起こす大きな原因となっている慢性腎臓病の患者数は、 約1480万人(20歳以上の約7人にひとり)と推計されています。 多くの人にとって、身近な病気のひとつです。貧血は、身体に大きな負担をかけます。さまざまな原因によって貧血は起こりますが、慢性的な貧血で悩まれている方は放置せず、早目にかかりつけ医か医療機関で相談してください。


生活ほっとニュース 生活ほっとニュース~北里柴三郎

 今年、20年ぶりに新紙幣が発行されました。1000円札には、「日本近代医学の父」と呼ばれる、北里柴三郎の肖像が描かれています。北里柴三郎の功績はいくつもありますが、そのなかで彼の名を最初に知らしめたのが、「破傷風菌の発見」と「血清療法(抗体療法)の確立」です。破傷風菌は、傷口から体内に入ると、神経を破壊する毒素を産生します。これによって身体には、開口障害や呼吸困難、身体の反り返りなど起こり、重症化すると死亡率が非常に高くなります。病名としては「破傷風」と呼ばれ、この病気がもとで死亡する人はかつて多くいました。北里柴三郎は、当時不可能とされていた破傷風菌の純粋培養に成功します。さらに破傷風菌の出す毒素に対する抗体を発見 し、血清療法(抗体療法)の確立につなげました。北里柴三郎の研究はその後も受け継がれ、破傷風の治療法はさらに進歩し、ワクチンの製造も行なわれるようになりました。先進国では破傷風の患者数は激減し、日本では死亡者数が年間10人以下に抑えられています。北里柴三郎はその後、感染症の研究機関を日本で初めて設立します。このときに尽力したのが、旧紙幣の1万円札に描かれていた福沢諭吉です。ちなみに、旧紙幣の1000円 札の野口英世は、この研究所で北里柴三郎の助手をしていという繋がりがあります。

資料提供:メディカルライフ教育出版