更年期障害で医療機関を受診した人の割合は、約3割とな っています。
症状が軽ければよいのですが、多くの女性がひとりで辛い 症状に耐えているのではないでしょうか。
日常生活に支障がでるほど症状が重い方は我慢せず、婦人 科を受診するようにしましょう。
●女性ホルモンの滅少による影響
月経がこない状態が12か月以上続くと、「閉経」とされています。
閉経になる平均年齢は50歳前後ですが、人によっては40代前半や、50代の後半に迎える人もいます。
そして、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた約10年間か「更年期」にあたります。
閉経は、卵巣の機能が徐々に低下することによって起こります。
そして卵巣の機能低下によって、 女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少します。
また、卵巣の機能低下や女性ホルモンの分泌の低下は、脳に影響を与え、自律神経の働きの乱れに つながります。
これらによって起こるさまざまな心身の不調のうち、なんらかの病気が原因ではなく、日常生活に 支障がでるような状態を「更年期障害」と呼びます。
●心身のあらゆるところに症状が
更年期障害では、血管の収縮・拡張をコントロールする自律神経の働きが乱れ、次のような症状が よく現われます。
ホットフラッシュ (のぼせ、ほてり)、発汗、肩こり、腰痛、関節痛 女性ホルモンの分泌の低下は、精神的な不調の原因にもなります。
疲労感、意欲・集中力の低下、イライラ、不安感、うつ、不眠、食欲不振 そのほかにも、頭痛、腹痛、便秘、下痢、乾燥肌、
ドライアイ、排尿障害、萎縮性腔炎、性交痛な どがあげられています。
●なんらかの病気が隠れていることも
更年期障害の症状は多岐にわたるため、気をつけなければならないことがあります。
それは、更年期障害ではなく、なんらかの病気が隠れているケースです。
更年期障害とよく似た症状が現われる病気は多く、甲状腺の病気(バセドウ病・橋本病)、心血管疾 患、うつ病などが代表的です。
これらの病気と更年期障害は、血液検査やCT・MRIなどの検査で医師が診断することが可能で す。
更年期障害と感じたら自己判断するのではなく、産婦人科を受診しましよう。
●ホルモン補充療法
更年期障害と診断されたら、カウンセリング、運動・食事療法のほか、ホルモン補充療法(HRT) が行われます。 ホルモン補充療法は、エストロゲン(卵胞ホルモン)を薬剤で補なう治療法です。 このとき子宮がある方は、プロゲステロン〈黄体ホルモン〉をいっしよに使用します。 このふたつのホルモンは、月経周期に関係するホルモンのため女性の健康に大きな影響を与えてい て、ホルモン補充療法は更年期障害の症状の速やかな改善が期待できます。
**男性の更年期障害**
男性ホルモンの分泌が低下することによって、うつ状態や意欲・性欲の低下、運動能力 の低下、睡眠障害といったさまざまな症状が起こることを、「LOH症候群」といいます。
女性ホルモンの減少によっておこる女性の更年期障害になぞらえ、LOH症候群は「男性 の更年期障害」とも呼ばれています。
男性ホルモン(テストステロン)の数値は、8.5pg/mlを下回ると明らかに数値が低いと 診断されます。
ちなみに、通常は70代でこの値に近づきます。
ところが現在、中高年の働き盛りの男性に、この8.5pg/mlを下回る人が増えてきました。
その数は、600万人とも推定されています。
女性の更年期障害は、時間の経過とともに回復する傾向があります。
しかし、男性の更年期障害は自然治癒が見込みにくく、積極的な改善手段を講じていく必要があります。
はっきりとした原因が分からないまま精神的・身体的不調に悩まされている場合は、泌尿器科で血液検査を受け、テストステロンの数値を調べてみてはいかがでしょうか。
数値が低い場合、軽度であれば生活習慣の改善や食事療法・運動療法によって、重度の場合は男性ホルモンの補充療法によって症状の改善が見込めます。
資料提供:メディカルライフ教育出版