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尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)


~皮膚のできるスピードが異常に速い、自己免疫疾患~

 乾癬にはいくつかの種類がありますが、そのなかで約9割を占めるのが、尋常性乾癬です。
乳幼児からシルバー世代まで、性別を問わず幅広い年齢層で尋常性乾癬は発症しますが、 とくに多いのは30~50代の男性となっています。
尋常性乾癬は、肌の見た目や痒みだけでなく、皮膚がフケのように剥がれ落ちてしまうことに悩んでおられる方が多くいらっしゃいます。

●尋常性乾癬の特徴---紅斑と鱗屑

 尋常性乾癬は、紅斑(赤く盛りあがったまだら状の病変)が皮膚に起こる病気です。
これは、正常な皮膚と比べて皮膚が生まれ変わるスピードが異常なほど速いことに原因があります。
皮膚が生まれ変わる周期は通常45日ほどですが、尋常性乾癬では4~7日間となっているため、急速に皮膚が作られて厚く盛りあがっていきます。
紅斑の大きさや形はさまざまで、身体のどこにでも起こりますが、とくに頭皮や肘、膝、臀部、太腿は、症状が出やすく なっています。
尋常性乾癬の紅斑は表面に、鱗屑(フケのような皮膚の粉)を伴っていることに特徴があります。
そして鱗屑は、ぽろぽろと簡単に剥がれ落ちます。

●免疫の異常によって起こる

尋常性乾癬 イラスト  尋常性乾癬において、なぜ通常の10倍もの速さで皮膚が作られるのか、その仕組みは完全には解明されていません。
ただ研究によって、免疫機能の異常が関係していることが分かってきました。
とくに注目されるのは、「サイトカイン」です。
サイトカインは、細胞から細胞へ情報を伝えるタンパク質です。
このサイトカインのなかで免疫機能に関係しているものが過剰に作られると、皮膚に炎症を起こしたり
皮膚の細胞を過剰に作り出したりします。
なぜ、サイトカインが過剰になるのかは不明ですが、免疫に異常をきたしやすい体質の人にストレスや肥満、
糖尿病、なんらかの化学物質の影響といったさまざまな要因が重なることによって起こると
考えられています。

●感染症やアトピー性皮膚炎との違い

尋常性乾癬 イラスト 尋常性乾癬ではっきりしているのは、人から人へ「感染」する病気ではないという点です。
移る心配も、移す心配もありません。
尋常性乾癬は自己免疫疾患のひとつに分類されています。
自己免疫疾患による皮膚の病気には、アトピー性皮膚炎があります。
違いとしては、アトピー性皮膚炎の場合、なんらかのアレルゲン(アレルギーのもととなる物質)が病気に関係している点です。
このため、アレルゲンを特定して、それを避けることで症状の改善が見込めます。
一方の尋常性乾癬では、要因が複合して病気を引き起こすため特定の原因を見つけ出して治療するという方法はとられません。

●尋常性乾癬---4つの治療法

  尋常性乾癬の治療法には、
外用療法(塗り薬)、
光線療法、
内服療法(飲み薬)、
注射・点滴(生物学的製剤)の4種類があります。 

○外用療法(塗り薬) 皮膚の炎症を抑える「ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用薬」、皮膚の細胞の異常な増殖を抑える「ビタミンD3外用薬」が用いられます。

 ○光線(紫外線)療法 皮膚に紫外線を照射して症状の改善をうながす治療です。紫外線には、「免疫の過剰な働きを抑制する」効果があります。湿疹の範囲によって、紫外線を全身または部分的に照射します。「外用療法」で十分な効果がみられない場合に行なわれます。

 ○内服療法(飲み薬) 中等症から重症の比較的症状が重い場合に用いられます。角質の異常な増殖を抑える薬や免疫の過剰な働きを抑える薬、炎症を抑える薬が用いられます。 

○注射・点滴(生物学的製剤) 上記の3つの治療で効果が見られない場合、注射や点滴による生物学的製剤を投与する治療が検討されます。この生物学的製剤は、尋常性乾癬の原因とされるサイトカインが過剰に作られるのを抑える薬です。

資料提供:メディカルライフ教育出版