l0秒間呼吸を止めてみると、それがいかくるしい事かわかります。睡眠時無呼吸症候群では、こうした状態が寝ている間、1時間に5回以上起こっています。これは睡眠時無呼吸症候群の診断基準です。実際には、こうした状態が一晩に200~300回以上繰り返すケースも珍しくありません。
睡眠時の無呼吸状態は、気道の入り口を舌が塞いでしまうことで起こります。とくに仰向けで寝ると、舌の根元が喉のほうへ落ちやすくなります。しかし普通は、呼吸に影響を及 ぼすほど舌が喉に落ちるということはありません。睡眠時無呼吸症候群の患者には、肥満によって喉に脂肪が付きすぎているケースが多く見られます。このため、喉の気道が狭くなって、舌の落ち方によっては呼吸を阻害してしまいます。ただ、日本におけるこの病気の患者の25%は、肥満ではない人が占めています。これには、下あごの小さい人が日本人には多いということが関係しています。あごの形状によっては、舌で気道を塞ぎやすくなります。
ところで、ご家族のいびきが大きいと感じることはありませんか?気道が狭いと、より強い力で空気を吸い込む必要があります。このとき、鼻や喉が激しく振動して、大きないびきとなります。いびきが大きい方は、睡眠時無呼吸症候群になるリスクが高くなっています。ご家族のいびきが気になる場合は、呼吸が止まることはないか観察してください。
睡眠時に呼吸が止まると、脳は生命の危機を回避するために覚醒します。そして、呼吸を再開するように身体に緊急信号を送ります。このため夜間の眠りが非常に浅く なり、日中に強い眠気を感じるようになります。こうした状態は、生活の質(QOL)を低下させるだけではなく、なんらかの重大事故を引き起こす原因になります。さらに睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞の発症・悪化リスクにもなっていて、身体の健康全体に大きな影響を及ぼしています。大きないびき、起きている間の強い眠気、こうした症状がある場合は、かかりつけの医師に相談するか、睡眠外来や呼吸器内科、耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群かどうかを調べるには、まず簡易検査を行ないます。簡易検査では、自宅でも取り扱える検査機器を装着して、皮膚から血液中の酸素結合度を計測したり、いびき音から呼吸の状態を調べます。簡易検査で睡眠時無呼吸症候群が疑われるときは、精密検査の必要があります。精密検査には一晩の入院が必要になります。検査時に複数のセンサーを身体に取り付けますが、痛みや苦痛の心配はありません。睡眠時無呼吸症候群の治療には、器具や機器を使って呼吸を楽にする方法が行なわれます。なかでも、睡眠時無呼吸症候群の治療として現在もっとも普及しているのが「CPAP(シーパップ)療法」です。CPAP療法は、就寝時に専用のマスクを装着して、装置から送り出される空気を吸入することで呼吸を楽にします。
スマートフォンとスマートウォッチを連携させることで、睡眠アプリは使うことができます。睡眠アプリでは「睡眠時間」が記録されます。何時に寝て、何時に起きたか。睡眠時にスマートウォッチをして眠るだけで、こうした数値を、睡眠履歴として残すことができます。これによって、睡眠時間がしっかりとれているかが、ひと目で分かるようになります。睡眠アプリのなかには、「睡眠の質」を記録する商品もあります。例えばあるアプリでは、眠りの深さを、覚醒・レム・コア・深い、の4段階で表示し、各段階の時間の長さや、睡眠全体に対する割合を表示します。ご自身の眠りが浅いと感じる方には、睡眠の状態を客観的に知る、きっかけとなるかもしれません。また、「睡眠時の呼吸数」を記録することができる睡眠アプリもあります。睡眠時の呼吸数が極端に多い場合は、身体になんらかのトラブルが起こっていることが考えられます。ただひとつ注意したいことは、睡眠アプリの記録(履歴)だけでは、睡眠障害や病気の判断はできないことです。あくまでも睡眠アプリは、睡眠や健康の維持・管理に利用し、不安があるときは、必ず医療機関を受診するようにしましよう。
資料提供:メディカルライフ教育出版