肝臓は、肝細胞という1mmの500分の1ほどの小さい細胞が無数に集まってできています。 そして、これらの肝細胞の一つひとつが、2000種類以上ともいわれる酵素(物質を分解するための分子)を使って、500種類以上の化学処理を行なっています。 この肝細胞を破壊してしまうのが三つの肝臓疾患です。
肝臓の病気には大きくわけて、「肝炎」「肝硬変」「肝臓がん」の三つがあります。「肝炎」は、肝細胞に炎症が起こっている状態です。原因として もっとも多いのは、肝炎ウイルスの感染です。 肝炎によって多数の肝細胞が死滅すると、それらは硬い繊維組織に変わります。この状態が「肝硬変」です。肝硬変になると肝臓の 機能は著しく低下します。 「肝臓がん」の多くは、肝硬変から進行することで起こります。肝臓がん患者の約8割の方が、肝炎ウイルスにかかっているという 報告もあります。
肝臓を守るには、肝硬変や肝臓がんになるまえの、肝炎の段階で対処することが大切です。しかし肝臓には痛みを発信する神経が臓 器の表面にしかないため、内部の肝細胞が破壊されても自覚症状が起こりにくいといった特徴があります。 健康診断や肝臓の検査が重要な理由はここにあります。健康診断を受けている方は、「ALT (GPT)」「AST (GOT)」といった項目を目にされ ていると思います。 これらは、肝細胞が破壊されると血液のなかに溢れだしてくる物 質の名前です。数値が高いほど肝細胞の破壊が進行していると考えられます。
重篤な肝臓疾患の原因のほとんどは、肝炎ウィルスの感染によるものです。 肝炎ウィルスの感染者は約200~250万人とされ、感染者の9割は40歳以上の方となっています。肝炎ウィルスに感染しているかどうかを知るには、「肝炎ウィルス検査」を受ける必要があります。 肝炎ウィルス検査は血液検査で、 ’身体には負担が少ない検査です。この検査は、全国の保健所や指定医療機関で、無料で受けることができます(地方によっては、検査費用の一部を負担する場合もある)。 肝炎ウィルスは、血液によって人から人への感染も起こるため、ご自身が知らないうちに感染源となってしまうことも否定できません。ぜひ肝炎ウィルス検査を積極的に受けるようにしましょう。
肝臓には物質の分解だけでなく、脂肪を蓄える役割があります。しかし、生活習慣や食生活によっては、肝細胞の働きを阻害するほど大量の脂肪が肝臓に溜まることが あります。脂肪が肝細胞の30%以上に溜まった状態を「脂肪肝」と呼びます。脂肪肝の患者数は推定で約3000万人、成人の三人に一人の割合に達しているとされています。 脂肪肝が肝炎に進行するケースもあるので注意してください。この段階であれば、生活習慣によって状態を改善できます。
サル痘は、サル痘ウイルスによる感染症です。このウイルスは、1958年に発見され、1970年にザイールで、人間の初めの感染が確認されました。それ以降、アフリカやアメリカの一部の州で、 感染者が出ました。おもな感染経路は、ウイルスを保有する動物(ネズミやリスなどのげっ歯類)に噛まれることです。 またこのウイルスは、接触・飛沫によって、人から人へも感染します。サル痘の発症は、感染してから平均十二日間の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが起こり ます。 発症から一~三日後には水庖(みずふくれ)が現われ、やがて全身に広がります。水泡は、十日ほどでかさぶたになり、三週間程度で消えます。 サル痘が発症しても、ほとんどのケースで自然軽快します。ただ、基礎疾患のある方や小児、高齢者の方は、健康状態によって合併症を引き起こすことがあります。 これまでサル痘は、流行地域が限られていました。しかし五月に感染がわかった人は、流行地域への渡航歴がなく、感染動物との接触もありませんでした。 このことは、市中感染を示唆しています。とはいえ、サル疸が新型コロナのようなパンデミックを引き起こす恐れは、低いとされています。
資料提供:メディカルライフ教育出版