重篤な病気を引き起こす原因となる「動脈硬化」ですが、 自覚症状があまりないという特徴があります。 そこで、動脈硬化の進行状態をわかりやすく表わす方法 が考えだされ、活用されています。 それが「血管年齢」です。
●動脈硬化が脳梗塞や心筋梗塞の原因に
脳梗塞や心筋梗塞----ここで使われている「梗塞」という言葉は「動脈が詰まることで脳や心 臓に血液が送られなくなり、組織が壊死する」ことを意味しています。 そして動脈が詰まる大きな原因となっているのが、動脈硬化です。 動脈硬化のなかでもっとも多く 見られるのが、粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)です。 動脈の内膜が傷つくと、血液中に含まれるコレステロールなどが 傷から内膜に入り込み、粥腫(おかゆ状の病変)となって沈着しま す。これによって動脈は狭く、また硬くなります。 この状態が進行すると、粥腫が破れて血栓(血の塊)ができます。そして、血栓によって動脈が詰まることで、脳や心臓に血液が十分に送られなくなり、組織の壊死につながります。
●血管年齢で動脈硬化の状態を知る
「人は血管とともに老いる」という言葉があるように、血管は加齢とともに老化し、硬くなっていきます。
血管年齢は、大勢の大を測定したデータをもとに、その人の血管の硬さが何歳に相当するかを調べるものです。
血管年齢が実年齢より高い場合は、動脈硬化が加齢の速度よりも進行していることが考えられます。血管年齢を測定し、早めに対処
することで、重篤な病気になるリスクを減らすことができます。
●血管年齢の検査について
血管年齢を測定する方法はいくつかありますが、医療機関で行われているのは、おもに「血圧脈波検査」です。血圧脈波検査では 「脈の速さ」を測定する検査と、「足首と上腕の血圧の違い」を調べる検査を同時に行います。脈の速さは、血管の硬さを表します。硬いものを通るときのほうが、柔らかいものを通るときより波(脈)速くなります。この性質を使った検査です。足首と上腕の血圧の違いは血管の詰まり具合を表わします。 一般的に、足首の血圧は上腕の血圧よりやや高くなっています。しかし血管が狭くなっていると、この血圧の差が基準より低くなり ます。 血圧脈波検査の検査そのものは、準備を含めて10分程度で終わります。ベッドの上に仰向けに寝て、装置を両足首と上腕に巻きつけ、数回、圧迫するだけです。血圧測定や心電図検査のような感じで、痛みや苦痛はありません。血管年齢を測定して、実年齢より上であっても悲観しないでください。治療が必要なほど動脈硬化が進行しているのでなければ生活習慣の改善により、血管年齢を保つことや下げることもできます。
【食生活の改善】
●塩分を控えめに
食生活において、まずは塩分の摂り過ぎに注意しましよう。塩分の過剰摂取は高血圧の原因となり、血管を痛めるリスクにもな
ます。厚生労働省から出されてる「日本人の食事摂取基準」では、男性は1日8g未満、女性7g未満が目標となっています。
●糖分の過剰摂取を避ける
糖分を過剰摂取すると、血液中のブドウ糖が増えてしまい、動脈の内膜に傷をつける原因となります。
●善玉(HDL)コレステロールを増やす
玉コレステロールを増やすことで、血管内に溜まる悪玉(LDL)コレステロールを適度な量に抑えることができます。具体的には、肉類よりも魚類や大豆類を。野菜や海藻、きのこ類など、食物繊維が豊富に含まれたものを食べるようにしましょう。
【運動習慣を取り入れる】
ウォーキングやジョギングといった有酸素運動は、血行を促進するので、血管を健康に保つのに有効です。
【その他の生活習慣】
アルコールの過剰摂取や喫煙習慣は、動脈硬化の大きなリスクとなっています。また、ストレスや睡眠不足にも注意しましょう。
資料提供:メディカルライフ教育出版