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腸内フローラを整える


「腸活」という言葉をよく目にします。腸活とは、腸内環境(腸内フローラ)を整えることで健康の維持・増進を目指すもので、腸内細菌の存在が大きな鍵になっています。

●腸内細菌と腸内フローラ

 大腸は、小腸から送られてきた消化物から、水分やミネラルを吸収して大便を作る働きをしています。この働きに欠かせないものが、腸内細菌です。大腸には、約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しています。これらの腸内細菌は、菌種ごとに腸の壁に隙間なく張り付いています。この状態を、腸内フローラ(腸内細菌叢)と呼びます。

●善玉菌と悪玉菌の対立

腸内フローラ参考図 腸内細菌は大きく、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の三つに分けられています。善玉菌は、大腸に送られてきた 消化物からブドウ糖や乳糖、食物繊維を発酵させ、乳酸や酢酸をつくります。また大腸の働きを活性化し、、免疫にも良い影響を与えます。一方の悪玉菌は、消化物のタンパク質やアミノ酸を分解してミノ酸を分解して腐敗させ、毒性のアンモニアやアミン硫化水素などの有害物質を生み出 します。代表的な悪玉菌は、ウェルシュ菌やブドウ球菌です。日和見菌は、善玉菌にも悪玉菌にも属さない菌で、腸内細菌のうちの約7割を占めています。そして、善玉菌と悪玉菌で優勢なほうを助ける働きを持っています。バクテロイデスやユウバクテリウムが代表的な菌です。善玉菌は弱アルカリ性を好むため、両者は対立した存在となっています。この争いは便秘といった腸の 健康だけでなく、肌や免疫システムにも影響を及ぼしています。

●食物繊維で善玉菌も増やす

善玉菌と悪玉菌と日和見菌の比率は、2対1対7が理想とされています。 このバランスは、日々変化するだけでなく、年齢によっても変わっていきます。乳児期に100億個以上あったビフィズス菌(善玉菌)は、60歳までに100分の1に減ってしまいます。 腸内フローラを理想的な状態に保つには、食事に注目する必要があります。 善玉菌は食物繊維を好み、悪玉菌はタンパク質を好みます。このことから、一日の必要量を確保した野菜の摂取を心がけ、肉類を摂り過ぎないようにすることが、善玉菌を増やすことにつながることがわかります。

●通過菌で善玉菌の応援を

善玉菌を増やす方法として、乳酸菌を豊富に含んだ、味噌、醤油、ぬか漬け、チーズ、ヨーグルトなどの発酵食品を摂るという方法もあります。 ここで注目したいのは、「食事によって摂取した乳酸菌は腸内には定着しない」という点です。 外から取り入れた菌は、通過菌と呼ばれています。ただ、定着はしませんが、腸内の善玉菌を活性化する働きはあります。 このことから発酵食品は習慣的に食べる必要があります。

●腸内フローラを守る

善玉菌は、腸の蠕動運動(便を押し出していく運動)を促進します。しかし、腸そのものが悪くなると、善玉菌も勢力を失っていきます。 善玉菌と腸の健康は互いに関係していて、良いスパイラルも悪いスパイラルも生まれます。腸の健康を脅かすものは暴飲防食や運動不足、ストレスです。下痢や便秘を繰り返していると、腸内フローラを理想的な状態にすることはできません。まずは、生活習慣を見直していきましょう。 それでも腸の不調が続くときは何らかの病気が隠れている恐れがあります。早目にかかりつけ医に相談してください。 

資料提供:メディカルライフ教育出版